交通事故の慰謝料は1日4200円だけなのか?

交通事故の加害者の任意保険会社から、被害者に慰謝料として提案されることが多いのが、1日あたり4200円という金額です。損保の担当者が、「この金額は定額になっています」「国土交通省の告示で決まっています」、という説明をすることさえあります。交通事故の慰謝料は、本当に1日あたり4200円と決まっているのでしょうか?

自賠責保険とは

自賠責保険とは、交通事故の被害者救済のため、基本的な対人賠償金を確保することを目的として、自動車損害賠償保障法に基づき、すべての自動車に加入が義務付けられた保険です。原動機付自転車も含め、自動車は、自賠責保険に加入しなければ、運転することはできません。

自賠責保険の支払いは、国土交通省が作成した「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」という支払基準に基づいて、被害者への支払いがなされます。

自賠責保険の支払基準

自賠責保険の支払基準による慰謝料額は、「 慰謝料は、1日につき4200円とする。」と定められています。この「1日」が治療期間すべてを意味するのかというと、そういうわけではありません。慰謝料の対象となる日数は、「被害者の傷害の態様、実治療日数その他を勘案して、治療期間の範囲内とする。

」と定められています。全治療期間の中で、実際に治療に通った日数などをベースにして、慰謝料の支払対象となる日数を決めることになります。実務的には、自賠責の慰謝料は、「治療期間×4200円」「実入通院日数×4200円×2」 のいずれか低い方の金額で処理されています。

例えば、事故当日から60日間病院に通って治療をしたが、実際に通院したのは3日に1日程度で、通院日数が20日とします。この場合、自賠責保険の慰謝料は、60日×4200円=25万2000円と、20日×4200円×2=16万80000円の、低い方の金額の16万8000円ということになります。

もっとも、自賠責保険には120万円という補償の限度額があります。これは慰謝料だけでなく、治療費等の損害も含めた金額です。上記の場合、例えば、60日間の病院への治療費だけで120万円以上かかり、120万円の枠を使い切っている場合、自賠責保険からの慰謝料の支払いはありません。

弁護士基準とは

自賠責保険の支払基準は、強制加入保険で人身交通事故の被害者に最低限の補償がなされることを目的としたものです。裁判などをした際に、加害者に請求する適正な慰謝料額の基準となるものではありません。適正な慰謝料の金額を算定する方法として、弁護士基準とか裁判基準と呼ばれるものがあります。

これは、法律家が過去の裁判例等を集めて、もし仮に裁判をした場合どの程度の慰謝料が認められるかという点を考慮して作られた基準です。この基準は、公益社団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が発行する「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻(基準篇)」という本に掲載されています。

カバーが赤いことから通称「赤い本」と呼ばれ、交通事故の損害賠償実務では必ず参考にされる本です。

弁護士基準の慰謝料

弁護士基準の場合、慰謝料は、通院1ヶ月なら28万円、通院2か月なら52万円、通院3ヶ月なら73万円、通院4ヶ月なら90万円、通院5ヶ月なら105万円、通院6ヶ月なら116万円、通院7ヶ月なら124万円、通院8ヶ月なら132万円、通院9ヶ月なら139万円、通院10ヶ月なら145万、通院11ヶ月なら150万円、通院12ヶ月なら154万円です。

入院期間がある場合は、さらに高額になります。また、むち打ち(頸椎捻挫)で他覚症状が無い場合はこれより安い基準が適用され、通院1ヶ月なら19万円、通院2か月なら36万円、通院3ヶ月なら53万円、通院4ヶ月なら67万円、通院5ヶ月なら79万円、通院6ヶ月なら89万円、通院7ヶ月なら97万円、通院8ヶ月なら103万円、通院9ヶ月なら109万円、通院10ヶ月なら113万円、通院11ヶ月なら117万円、通院12ヶ月なら119万円です。

治療期間の一ヶ月に満たない部分は、上記の数字から日割り計算して計算します。また、治療期間の中で、実通院日数が少ない場合は、上記から調整がなされます。例えば、病院に通った期間は6ヶ月だけれども、通院回数が5回程度しかないというような場合は、6ヶ月満額での計算ができない仕組みになっています。

通院期間が数日しかない場合は微妙な差しかありませんが、基本的には、弁護士基準の慰謝料は、自賠責保険の1日4200円という基準より高額です。

後遺障害慰謝料

交通事故の慰謝料には、上述した怪我による入院・通院に対する慰謝料のほか、後遺障害を負った場合の後遺障害慰謝料というものがあります。これは、怪我による慰謝料とは別に支払われます。後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害の重さにより認定される等級により異なります。

自賠責保険の支払基準では、後遺障害の慰謝料は、1級なら1100万円、2級なら958万円、3級なら829万円、4級なら712万円、5級なら599万円、6級なら498万円、7級なら409万円、8級なら324万円、9級なら245万円、10級なら187万円、11級なら135万円、12級なら93万円、13級なら57万円、14級なら32万円です。

弁護士基準では、1級なら2800万円、2級なら2370万円、3級なら1990万円、4級なら1670万円、5級なら1400万円、6級なら1180万円、7級なら1000万円、8級なら830万円、9級なら690万円、10級なら550万円、11級なら420万円、12級なら290万円、13級なら180万円、14級なら110万円です。

このとおり、後遺障害慰謝料は、自賠責保険の基準よりも、弁護士基準の慰謝料の方が、圧倒的に高くなっています。

損保から1日4200円の示談案が届いたら要注意

交通事故の慰謝料は1日4200円だけなのかというと、そうではありません。1日4200円というのは、最低限の保証のための自賠責の支払基準により計算される額です。この金額が、加害者が被害者に支払うべき法律上適正な慰謝料額というわけではありません。

それにもかかわらず、加害者の任意保険会社の多くは、自賠責の支払基準で慰謝料を計算し、示談の提案をしてくることがとても多いです。加害者の任意保険会社からの示談の提案書に、慰謝料が1日あたり4200円と書いてある場合、そのまま示談に応じるのは注意が必要です。

増額を目指す場合には、弁護士等の専門家に相談したほうが良いでしょう。